2007年 12月 31日
イブの朝に-3 |
Leica M2 Summilux 35mmF1.4
警部、俺を3日間自由にしてくれないか?
忘れたのか。ジョン、お前さんは容疑者で重要参考人って事を。
俺が犯人だと思うか?
いや、俺はお前と長い付き合いだ。
酒と女にはだらしがないが間違ったことに手を出すような人間じゃない事は知っている。
しかし署ではお前を犯人と考えている奴もいる。
とにかく、俺一人で決められることでは無いから上と掛け合ってくるが。
3日後には真犯人が分かると言うことだな。
いや、真犯人が分かるかどうかは責任を持てないが、
誰が何のために俺を罠にかけたのかは分かるはずだ。
そこから先は警部、あんたの出番だよ。
コーディ警部がどんな話で交渉したのかは分からなかったが、
とにかく3日間の時間はくれた。
ただし行き先を明確にすること連絡を絶やさないことと言う条件付きでだが。
ジョン、右手を上げて誓えよ。
大げさだな。
見ると警部は引き出しから使い古した黒い表紙の本を取り出し俺に言った。
お前の元上司で親代わりのコーディ・イヴァノビッチと祈祷書に誓いなさい。
俺は子供の頃からと同じ様に誓った。
で、行き先は?
ニューヨーク
連絡を絶やすんじゃないぞ。
俺は探偵としての守秘義務で警察に黙っていた訳ではない。
奴が俺を罠にはめたのなら自分の手で借りを返したかったからだ。
俺はこう見えても義理堅い方だ。
それから俺はボートハウスに戻り少しの着替えとニコンをアタッシュケースに詰め、
隠し戸棚からキャッシュを取り出し通りに出た。
捕まえようと思うとなかなか捕まらないのがタクシーだが今日は珍しく直ぐに捕まった。
もう一つタクシーというのは運転手がやかましいかラジオがやかましいかのどちらかと決まっているものだが今日のタクシーは運転手とラジオの双方がやかましいときた。
空港に着くまでラジオはヒルビリーだかロカビリーだかわけの分からない騒音を撒き散らすし運転手は嫁さんの愚痴をわめき倒すと言う最悪のタクシーだがとにかく時間通りに空港に到着した。
全く文明というやつは...。
タクシー運転手を残し俺は空港のロビーへ歩いていった。
ニューヨーク便にはまだ1時間以上時間が有った。パンナムのカウンターで搭乗手続きを済ませレストランで今日始めてのまともな食事と、まともなコーヒーを飲んだ。
ロビーと搭乗中の客や搭乗員にカメラを向け一本ほど撮り俺は搭乗した。
全く、フォトグラファーな探偵さんだぜ。
搭乗して直ぐにウイスキーのポケット壜を取り出し俺は寝ることにした。
鉄の塊が空を飛ぶことより鉄の塊が水に浮くことのほうが信用出来る。
だから俺は前の戦争では海軍に志願した。
これは俺が内緒にしている一つだ。
機の振動とウイスキーの力が恐怖に打ち勝って俺は睡眠を確保した。
作戦を考えるのはニューヨークに着いてからでも遅くは無い。
以下、来年へつづくか?
by leica-m8
| 2007-12-31 23:56
| colum